97年に10本ほど製作されたという、弓弾きを可能にしたエレクトリック・ベース。その後同数程度の再生産を経て、後継モデルもあったようですが何れにせよ、このようなコンセプトの楽器は希少である事に変わりはありません。
そして本機は、そのような楽器の中、シリアル番号 0001番のオリジナル・モデルになります!
まだプロトタイプに近い側面もありメーカーによる改修箇所もあるようですが、そういう部分も含めてオリジナル、原器といってもよい個体でしょう。
外周部分がわずかに濃いめに仕上げられた、オレンジ・サンバーストのアルダー・ボディは、基本シルエットはジャズベース風でありますが、両方の「くびれ」の部分に極端なコンターがつけられ、コントラバス的指板Rと、大きなネックの仕込み角から、弓の返しを可能にしています。ネックはメイプルとウォルナットの5ピース・ラミネートで、指板は前述の極端なRを実現するために 15mm厚もの厚みのエボニー材となっております。非常に贅沢な作りです。
一見ピエゾPU などが入っていそうな見た目ですが、本機はこだわりのPタイプのみです。通常マグネティックPU は、磁界に対して横方向の弦振動に対して最大感度が得られ、指弾きやピック弾きで最大音量が得られます。それに対して弓弾きは縦方向の弦振動ですので、どうしても感度が弱くなってしまいがちです。ジラウドではそれを独自の工夫で乗り越えて、弓弾きでも高感度が得られるPUを独自に開発しました。また、入力インピーダンスが異様に高い独自のプリアンプ「JFdt-W」を実装。「ピエゾでは得られない実に 箱鳴りのするサウンドが得られ」としています。
独善的と言っても過言でない設計思想は、やりきっているか否かにより評価が決まってくるものですが、ジラウドのカリスマぶりがそれを証明してくれているのでしょう。保守的な製品ばかりの現在より、突飛だけど面白い製品が多かったあの頃に少し懐かしさを感じます。
楽器は、弓弾きの際の楽器位置を工夫する努力の為、色々な位置にストラップピンを取り付けた痕がたくさん開いています。またブリッジ下のボディ部分は、何らかの目的の為にメーカー工場にてアルダーではない別の、ブビンガ的な木材が埋め込まれていています。エボニー製のブリッジは、マウント・スクリューが2箇所追加されているようで、埋め込まれたボディと関係があるかもしれません。指板上のポジション・マーカーはシールです。

やや難ありな非純正ソフトケースが付属します。